介護研究ーインタビューデータの分析ー

投稿者: | 2018年5月26日

施設長から,職員に仕事を続ける理由について調べるように言われたリサさん(「介護研究ーインタビューの種類ー」)。インタビューガイドも作成して,インタビューをする準備ができました(「介護研究ーインタビューガイドをつくるー」)。

さて,今回はインタビューをしたデータの分析について説明します。

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データの整理

リサさんたちは,会議室を借りて,早速同じフロアの職員にインタビューを行いました。

インタビューは,最初に研究の説明を行い,同意を得て,データはインタビューガイドへのメモとボイスレコーダーで記録します。

1週間かけて,フロア職員全員分のデータを集めることができました。

「さあ,データを集めたのはいいけれど,これをどうしたらいいんだろう。」
「うーん,量のデータじゃないから,平均値を計算したりもできないしなあ。」
「やっぱりマナブさんに聴いてみようか。」

リサさんとアキラさんは,マナブさんに相談しました。

「じゃあ,インタビューをしていて,わかったことをまとめてみようか。」

「うーん,まず仕事を始めた理由は様々でしたが,共通する点としては施設を見たり,家族の介護を経験するなど,『介護と接する機会』があった人が多かったように思います。」
「あ,私もそれ感じた。それで,『いい仕事だな』と思った人や『私にもできるかも』と思った人が多い気がする。」
「それで,実際に仕事としてやってみると大変だし,辛いこともいろいろあって,不満もたくさんあったけど・・・。でも,それなりに楽しみも見つけてる人が多かったかな。」
「『お金のため』と割り切ってる人もいたけどね。この業界でしか働いたことないから,『他の仕事はできるか不安』だから続けてるっていう人もいた。」
「うん。職員が感じている楽しみは,やっぱり『利用者さんの笑顔』とか,『感謝の言葉』とか。」
「『職員は必ずしも利用者と仲良くなる必要はない』って考えている人もいておもしろかったな。その人は,『利用者に嫌われてもその利用者の生活が豊かになるようにする』っていうことを目標にしていた。」

マナブさんは二人の話を聴いて言いました。
「OK,じゃあ,さっきの話をまとめてみようか。
まずね,インタビューのような量で表せない質的データは,コーディングをすることから分析を始めるんだ。
コーディングっていうのは,データに名前をつけること。例えば,Aさんが『おばあちゃんを自宅で介護をしていた』という話をしていたら,これを『介護と接する機会』とコーディングすることができる。」
「ああ,さっき話した内容だ。」
「人それぞれ,話した言葉は違うと思うけど,コーディングすることで,共通項を見つけていくんだ。
今回は,さっき話した内容を中心にコーディングしていこうか。」

テキスト・データを1行1行丁寧に読み込んで,思いつくままコードを書き込んでいくことをオープン・コーディングといいます。通常,データ収集の初期段階でオープン・コーディングを行います。ある程度注目するコードが決まると,コードをさらに抽象化した”概念”を考えたり,コード同士の関係性,概念のつながりなどを検討していきます。これを焦点的コーディングといいます。このように,文章(文脈)からコードを取り出すことを脱文脈化といいます。

音声データをテキスト化する

「でも,コーディングするにしても,インタビューガイドに書いたメモしかないけど。」
「そう,だから実際に話したことがわかるように,録音したデータを文字起こしするんだ。」
「え・・・・,文字起こし・・・。」
「大丈夫,施設長に頼んで,文字起こしは業者に発注する許可はもらってるから。」
「マナブさん,ありがとう!」

録音したインタビューデータは,後で分析しやすいように文字起こしを行います。録音時間が短ければ自力で文字起こしをすることもできますが,録音時間が長かったり,たくさんの人にインタビューした場合は,録音データを送って業者に文字起こしを発注するのも一つの方法です。当然,お金はかかってしまいますが・・・。このような文字起こししたデータは,トランスクリプトと呼ばれます。

概念モデルの構築

「マナブさん,文字起こしされたデータが返ってきました。」
「よし,じゃあ,コーディングの作業をやってみようか。」
「はい,実はアキラさんと私で,もうある程度やってみました。」

マナブさんは,トランスクリプトに書き込まれたコードを眺めて言いました。

「うん,いいんじゃないかな。コード同士を整理して分類してみようか。」
「分類?」
「そう,コードを付箋に書き出して,似た者同士を分類してみるんだ。こういう作業をデータベース化っていうんだよ。
例えば,『利用者さんの笑顔』と『感謝の言葉』は近い内容だと思う。『利用者のポジティブな反応』っていうカテゴリーとまとめることができるかな。
こんな風に,コードをさらにひとつ上のカテゴリーでまとめてみるんだ」

早速3人で,コードを付箋に書き出して,3人で話し合いながらコードを分類していきました。

「じゃあ,カテゴリー同士のつながりを考えてみよう。『介護と接する機会』から,『自己への置き換え』にはつながるよね。」

3人は,今度はカテゴリー同士のつながりについて考え始めました。

質的研究は,コードやその上位のカテゴリーを取り出し,そのカテゴリー同士の関連について分析して,モデルを作ることを目標にします。このモデルをつくる作業をストーリー化といいます。一度,脱文脈化したデータを再度ストーリーにするという意味で,再文脈化とも言われます。

施設長への報告

リサさんは,3人でまとめた内容を施設長に報告しました。

「うーん,さすがに職員達に直接聴いただけであって,リアルな意見が多いね。」
「はい,うちの良いところをアピールするには,ちょっとむいてないデータもあるかもしれませんが。」
「いや,今度の仕事説明会では,この内容を素直に説明しようと思う。良いところばかりじゃなくて,現実的な部分もしっかり説明すれば,良い人が集まりそうだしね。
ありがとう,助かったよ。」

インタビュー調査まとめ

介護研究ーインタビューの種類ー」,「介護研究ーインタビューガイドをつくるー」と本記事で,インタビューによる調査についてまとめてきました。

インタビューのような質的研究におけるデータの分析方法は,本当にたくさんあります。

例えば,佐藤 郁哉の質的データ分析方法-原理・方法・実践」では,質的研究のコーディングの方法などについてわかりやすく書いてあります。
また,大谷尚のSCATは,コーディングをやりやすい手法です。

質的研究方法として有名なのが,グラウンデッド・セオリー・アプローチです。特に,木下康仁が提唱している修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)の手法は,具体的な手順なども書いてある参考書が多いためお勧めです。(「ライブ講義M-GTA 実践的質的研究法 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチのすべて」,「グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践―質的研究への誘い」など)

他の研究方法は,「自分たちの介護を研究したい!研究方法のまとめ」でまとめていますので,参考になさってください。


できれば多くの方に読んでいただきたいと思っております。

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介護研究ーインタビューデータの分析ー」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 自分たちの介護を研究したい!研究方法のまとめ – ひとにやさしくじぶんにやさしく

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