音楽療法の効果を検証するーマルチベースラインデザインー①

投稿者: | 2018年5月9日

これまで,単一事例の研究として,ABABデザインを紹介した(「介護研究ーABABデザインを用いた研究ー」,「寝たきりの高齢者へレク活動ーボディソニックの検討ー」)。
ABABデザインは,ベースラインのAデザインを実施した後,介入のBデザインを実施し,その後いちどAデザインに戻さないといけない,というデメリットがある。
実際の現場では,一度はじめた取り組みをいったんなしにする,というのは,現実的ではないかもしれない。

ここでは,ABABデザインに代わる研究方法として,マルチベースラインデザインを紹介する。
ちなみに,筆者は音楽療法については素人レベルの知識しかないので,その辺はご了承願いたい。あくまで,マルチベースラインデザインの紹介として読んでもらいたい。

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音楽療法士のウタコさん

主任のケンゴさんが,リサさんとアキラさんに新人を紹介しました。

「今日から,うちのフロアに来てもらうことになった,ウタコさんです。」
「ウタコです。よろしくお願いします。」
「ウタコさんは,初任者研修を取ったばかりで,まだ介護にはまだ慣れてないけど,音楽療法士の資格を持ってるんだって。」

「へえ,音楽療法士。」
リサさんとウタコさんは,感心します。

「せっかく音楽療法士の資格を持っているんだから,週に1回くらいは,ウタコさんに音楽療法をやってもらおうと思うんだけど。」
「いいですねえ。」
「ウタコさん,やってもらえるかな?」
「はい。私も音楽療法の効果について研究したいんで,是非お願いします!」

「研究」という言葉にビビっときたリサさん。
ウタコさんに日勤の仕事を教えながら,思い切って聴いてみました。

「ウタコさん,音楽療法のどんな効果を研究するの?」
「うーん,どうでしょうか。その音楽療法の目的や計画によると思うんですけど。」
「目的や計画?」
「はい,音楽療法って,ちゃんと目標を決めて,それに向けて計画を立てて実践するんです。そして,活動をやって,どんな風に利用者が変わったか,評価もします
介護もそうじゃないですか、ちゃんと介護の目標を決めて,それに向けてケアプランを立てる。
音楽療法は,ただみんなで歌ったり,音楽を聴くだけじゃなくて,きちんと目標に向けて,計画を立てて,活動の内容を考えるんです。」
「ふーん,なるほど。じゃあ,カラオケでただ歌ってる,っていうんじゃあ,音楽療法とは言えないのか。
ウタコさんは,どういう目標で音楽療法をやるの?」
「それはまだ,利用者さんのことや施設のことをよく知らないと,目標や計画は立てられないので。。。」
「そうか,そうだね。じゃあ,音楽療法の準備ができたら,教えて!私,研究大好きだから。」
「ありがとうございます。私,研究はまだやったことがなくて。『リサさんは,研究のプロだから,研究についてもいろいろ教えてくれるよ。』と主任もおっしゃっていました。よろしくお願いします。」
「ケンゴさん,そんなこと言ってたのか。。。」

音楽療法の計画

ウタコさんが来て,1か月ほど経ちました。ウタコさんは,各シフトで独り立ちをして,利用者さんや施設のことが大体わかってきたみたいです。

リサさんとアキラさんが休憩していると,ウタコさんが来ました。

「休憩中すみません。音楽療法の計画ができたので,ちょっと見てもらえますか?」
「おー,すごいね。Aさんかあ。Aさんは,歌が好きだからいいんじゃないかなあ。」

ウタコさんが作った計画表には,音楽療法に参加できそうな利用者のAさんに対して,ウタコさんが改善しようと思っている内容,それに対して音楽療法でどのようにアプローチするのか計画表に書いてあります。
次に活動計画として,約半年分の計画が書いてありました。

「すごい。これが音楽療法士の計画かあ。」
「そんな大したものじゃないですよ。」
「いやいや。すごいよ。音楽療法って,歌ったりするだけじゃないんだね。ほら,身体を動かす体操やリズムを使うものものもある。
これは,週に1回,Aさんに音楽療法をするんだよね。私,音楽療法って,集団でやるんだと思ってた。」
「はい,集団でやる音楽療法もありますが。。。レクの時間にAさんがあまり他の人と会話しないのが気になって,まずはAさんを対象に音楽療法をしようかな,と。」
「ふーん,一応キーボードはあるけど,それで大丈夫?」
「はい,大丈夫です。」

ウタコさんが設定した音楽療法の目標は,「Aさんの会話を促す」という項目がありました。

リサさんが尋ねます。
「ちなみにさ,評価をするためには,音楽療法を始める前に,データを取らなきゃいけないと思うんだけど。」
ベースライン!(「介護研究ーABABデザインを用いた研究ー」)」
アキラさんが反応します。
「そう,ベースラインのデータは確認できるのかな。」
「はい,それなら。」

ウタコさんは,別の資料を出して,Aさんのレク中のコミュニケーションについての1か月のデータを二人に見せました。
「うわ,すごい!」
「コミュニケーションについては,私毎週月曜日が日勤なので,その日のレクに参加していたんです。そのレク内でAさんがだれと会話したか,メモを取っています。」

アキラさんがリサさんに言いました。
「リサさん,これはもうウタコさんの方が,研究上手なんじゃないの?」
「だから,私は研究のプロじゃないって。」

ウタコさんの音楽療法

ウタコさんの計画を見た主任のケンゴさんはびっくり。もちろんOKを出して,毎週月曜日のレクの時間に,ウタコさんは音楽療法をやることになりました。

音楽療法の様子は,AさんやAさんの家族の了解を得て,ビデオ撮影が行われます。

はじめにAさんに挨拶して,ウタコさんの伴奏に合わせて,Aさんが好きな曲をウタコさんと歌う。音楽療法はこんな風にはじまりました。

「ウタコさん,ウタコっていう名前だけあって,やっぱり歌が上手いねえ。」
「ピアノも上手だねえ。」
仕事の合間に様子を見ていたリサさんとアキラさんは感心しました。

そのあと,ウタコさんはAさんに合わせて自作した楽器を演奏してもらったり,リズム体操などが行われました。
音楽を使ったゲームも行われ,最後にもう一度歌って,約30分で音楽療法は終わりました。

 

まとめ

ABABデザインでもあったように,「ベースラインの記録をとる」ということは,とても重要です。

ウタコさんの研究はどのように進んでいくのでしょうか。

続きは,「音楽療法の効果を検証するーマルチベースラインデザインー②」をご覧ください。

他にも研究方法については,「自分たちの介護を研究したい!研究方法のまとめ」にいろいろ書いているので,参考にしてみてください。


できれるだけ多くの方に読んでいただきたいと思っております。
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音楽療法の効果を検証するーマルチベースラインデザインー①」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: 自分たちの介護を研究したい!研究方法のまとめ – ひとにやさしくじぶんにやさしく

  2. ピンバック: 介護研究ーインタビューの種類ー – ひとにやさしくじぶんにやさしく

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