2018年度介護保険法改正のポイント

投稿者: | 2018年2月23日

2018年から,介護保険法が改正され,いろいろと変わる部分が出てくる。
今回は,その介護保険の改正のポイントを解説する。

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改正の経緯

介護保険制度は2000年にスタートして,3年ごとに改正されている。

よく,「超高齢社会」という言葉を聴くが,WHOの定義では,
「高齢化社会」:全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が7%を超える(日本では1970年)
「高齢社会」 :全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が14%を超える(日本では1995年)
「超高齢社会」:全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が21%を超える(日本では2007年)

この間隔でいくと,高齢化率(65歳以上の高齢者の割合)が28%を超えると,言わば「超超高齢社会」になるけど,
平成29年版の高齢社会白書では,日本の高齢化率は2017年現在27.3%で,もう目前に迫っている。
高齢化率27.3%ということは,4人に1人が高齢者という現状だ。

さらに,団塊の世代が2025年は75歳以上になるということで(2025年問題),
介護や医療のニーズはどんどん高まっている。

2017年の厚労省の発表資料によれば,人口一人あたりの医療費は,
65歳未満は18万4900円
65歳以上は74万1900円
となっている。

そんなこんなで,年金・医療・介護などの社会保障給付費は過去最高を更新し続けている。
その増え続けている社会保障給付費を抑える必要がある。
まあ,この2025年問題などについては,以前からわかっていたことで,それに対応するために以前から様々な政策はとられていた。(「高齢者福祉政策と介護保険」)
今回の改正もその一環だととらえることもできる。

今回の改正は,「地域包括ケアの深化」と「制度の持続可能性を高めること」を柱として,改正案が検討された。

改正ポイント

自己負担額の見直し

現状,介護保険の自己負担金額は,多くの方が1割負担だ。
しかし,2015年から一定の所得がある人は2割負担となった。
これが,一部の利用者は3割負担になる。(2018年8月~
ただし,月額44000円の負担上限が設定される。

今改正では,「現役世代並みの所得」がある所得の高い層は3割負担となる。
世帯構成などで変動するが,年金等の所得が単身世帯なら年340万円以上
夫婦世帯なら年463万円以上なら,「現役世代並みの所得」ということで,3割負担となる。

 

介護医療院の創設

2018年4月から,新たな介護保険施設「介護医療院」が創設される。

これは,要介護者に対して,「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する施設だ。
特別養護老人ホームは,介護を提供する施設であり,医療の提供は(原則)行われない。
老人保健施設は,医療ケアも行われるが,在宅復帰を前提としており,入所可能期間が3か月~1年程度。

今回の介護医療院は,慢性期の医療・介護ニーズに対応するために創設された。
開設主体は医療法人,社会福祉法人,地方公共団体などだ。

この介護医療院と似たようなサービスは,介護療養型医療施設で行われていた。
この介護療養医療施設には,「介護療養病床」と「医療療養病床」がある。
介護療養病床は,介護保険が適用され,長期的に介護療養が必要な人が対象。
医療療養病床は,医療保険が適用され,長期的に医療療養が必要な人が対象。
それによって,人員の配置基準も異なる。

しかし,実際のところ,どちらの利用者も医療依存度の高い人と低い人が混在しており,
状況に大きな差はみられず,医療と介護が明確に区分されていないことがわかった。

介護療養型医療施設は「長期療養」のため,定員の9割が埋まっている。
そのため,医療ケアと介護を同時に受けたい人も,療養病床に入れないという問題もあった。

このような問題を解消するために,介護療養型医療施設は廃止し,
介護医療院が創設される。

介護医療院はⅠ型とⅡ型とがあり,
Ⅰ型は要介護度が4~5で,様態が悪化するおそれがある人。
Ⅱ型は,Ⅰ型よりも軽度で,医療・介護依存度が低い人が対象となる。

自治体にインセンティブ

全市町村が自立支援・重度化予防の目標を記載し,介護予防を実施する。
要介護状態の維持・改善度合いや地域ケア会議の開催状況などを実績評価し,
それに応じて自治体に交付金が出される。(2018年8月~)

要するに,要介護状態にならないよう,自治体も頑張って介護予防しなさい。
頑張った分だけお金出すから。という制度だ。
要介護状態の高齢者が減れば,当然介護保険の財政も改善されていく。

ただ,問題点として指摘されているのが,
介護における市町村格差が広がってしまうこと。
さらに,介護認定が厳しくなることが懸念されている。

介護保険のサービスを受けるには,本人や家族が市町村の窓口に申請し,利用者本人や家族が調査員の聞き取り調査を受ける。
その結果に基づいて要介護認定がされるわけだが,
この介護認定の区分によって,受けられるサービス内容や支給限度額が変わる。

保険者である市町村は,財政的な面を考えれば要介護度は軽い方がいい。
でも家族は,サービスをより多く受けたいから,要介護度は重い方がいい。
実際,普段は認知症症状がある方でも,聞き取り調査の調査員が来たときはしっかりしていて,
要介護度が軽く判定されるケースはある。

今回の改正で,実際の介護度より軽い認定がされる懸念がある。

障害・高齢サービスを一体的に提供

介護サービスと障害福祉サービスを一体的に提供する「共生型サービス」を介護保険サービスの一類型として新たに創設する。(2018年度の介護・障害報酬改定において,基準を検討)

障がい者が高齢者となり,介護保険の被保険者になった場合,現在は介護保険優先の原則があり,それまで利用してきた障害福祉サービスとは別の事業所を利用しなければならなくなる。
そこで,障害福祉事業所も介護保険事業所の指定を受けやすくなる特例を設けて,一つの事業所が障がい児者のサービスと高齢者のサービスを提供できるようにするというもの。

対象サービスは,ホームヘルプサービス,デイサービス,ショートステイが想定されている。

介護納付金への総報酬割の導入

介護保険は,65歳以上の人だけの話ではない。
40歳~64歳で医療保険に加入している者は,第2号被保険者と呼ばれ,医療保険料と一体的に介護保険料も徴収されている。
(ちなみに,65歳以上の人は第1号被保険者という)

現在までは,この第2号被保険者の保険料は,頭割りだったが,今回の改正で収入に応じて負担することになった。
2018年8月より,段階的に導入され,2020年度までに全面実施される。

今回の改正により,健康保険組合や共済組合は介護保険料は高くなり,協会けんぽは安くなるとの試算が出ている。
第67回社会保障審議会介護保険部会資料

まとめ

こういう記事を書くと,「ああ,やばいよなあ。」という気持ちになる。

医療保険,介護保険,年金と高齢化が進めば進むほど,財政はひっ迫してくる。
それでもなんとかこの制度を維持しようと,制度を運営している人たちは必死なんだ。
国としては,高齢になってもできるだけ医療や介護が必要になって欲しくない。
年金だって,働ける人には働いてもらって,できるだけ支出を抑えたい,と必死になっている。

別の視点から言えば,その辺をうたった事業を提案すれば,補助金がつく可能性も高いだろう。

介護職としては,この辺のこともある程度理解しつつ,
それでも利用者本位の立場で声を上げることが重要だと思う。

2018年度介護保険法改正のポイント」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: 介護保険って何?外国人も入れるの? | ひとにやさしくじぶんにやさしく

  2. ピンバック: 高齢者福祉政策と介護保険 | ひとにやさしくじぶんにやさしく

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