前回の記事(「介護研究ーインタビューの種類ー」)で,施設長から,職員に仕事を続ける理由について調べるように言われたリサさん。
マナブさんに,インタビューの方法についていろいろ教えてもらったリサさんとアキラさんは,職員の方個人個人に,半構造化面接を行うことにしたようです。
目次
インタビューをシミュレーションする
「半構造化面接っていうのは,質問項目を決めておいて,会話の流れに合わせて聴いていくんだよね。」
「じゃあ,質問項目をまず決めないとだね。」
リサさんとアキラさんは話します。
「質問項目って言っても,『仕事を始めた理由』と『なぜ仕事を続けているのか』ってことでしょ?」
アキラさんが言います。
「うん,でもそれだけじゃ答えにくいし,十分なデータが集まらないと思うよ。」
マナブさんが答えました。
「じゃあ,リサさんがアキラさんにインタビューしてみようか。」
マナブさんの提案で,リサさんはアキラさんに聴いてみました。
「アキラさん,どうして介護の仕事を始めたの?」
「うーん,お金のためかなあ。」
「じゃあ,いまもこの仕事を続けている理由は?」
「それこそ,お金のためだよ。」
「・・・」
アキラさんは困っていると,マナブさんが助け舟を出しました。
「これだと,たぶん欲しいデータじゃないよね。アキラさんは,とても正直に答えてくれているけど。今回のインタビューで知りたいことは何かな?」
「えっと,『なぜこの仕事をはじめたのか』と,『この仕事を続けている理由』」
「うん,その質問の意味をもうちょっと考えてみよう。さっき,アキラさんは『お金のため』と答えたけど,それは介護に関わらず『仕事をする理由』だよね。じゃあ,なぜ介護の仕事を選んだのか聴く必要があるよね。」
「そうか」
リサさんは,アキラさんにまた聴いてみます。
「アキラさん,『お金のため』と答えたけど,なんで介護の仕事を選んだの?」
「なんで?うーん。私,高校を卒業する時に,大学には行きたくなくて,就職先を探していたんだけど。私のおばあちゃんが,この施設を昔利用していて,あ,もうおばあちゃんは亡くなったんだけどね。それで,この施設が求人を出してて,無資格でもいい,って書いてあったから応募してみたんだ。」
「じゃあ,仕事を始める前に,うちの施設に来たことがあったんだ。」
「うん,おばあちゃんには毎週会いに来てたし,夏祭りみたいなイベントにも来てたよ。」
「そうなんだ。何回か来たことがあったから,あんまり抵抗がなかったのかな。」
「そうだねえ。他の利用者さんとも話したりして,結構楽しかったし,介護の仕事もいいかなあ,って漠然と思ってた。」
・・・・
リサさんとアキラさんは,ひとしきり話しました。
「どうだった?」
「最初より,全然いろんな話が聴けた。」
「そうだね,大事なのは答えられた質問に,もう一歩踏み込んで聴くことなんだ。
そのとき,『なぜ』,『どうして』と掘り下げるとやりやすいと思うよ。」
「うん,さっきも『なんで介護の仕事を選んだの?』って聴けたから良かったんだと思う。」
「そうね,聴かれた方も,そう聴かれて,はじめて答えられた気がする。」
アキラさんも言いました。
インタビューガイドを作る
「質問項目を考えるのも大事な事なんだけど,できるだけシミュレーションしておくことも大事なんだ。例えば,『お金のため』という答えがあったときは,さらにどんな質問をすればいいのか,準備をしておけるからね。
僕は,簡単だけど,こんな感じで,質問項目を作っているよ。」
「エクセルの一番左の列に,聴かなきゃいけないこと。その次の列に,予測できる相手の反応。その次の列に,その反応に対する質問を書いてる。
行を切り貼りすれば質問の入れ替えが簡単だから,僕はエクセルをよく使ってる。」
「へえ,エクセルって,計算するだけだと思ってた。」
「文章を書いたり,プレゼンする時も,僕はエクセルをこんな風に使って,話す順番とか考えてるよ。
じゃあ,インタビューガイドを作ってみようか。」
「インタビューガイドって?」
「どんな順番で質問をするのか。また,質問に対する答えをメモできるようなガイドだよ。」
「あ,じゃあさっきのエクセルのやつを,そのまま使えばいいね。」
「そうだね。じゃあ,他の質問項目を考えよう。」
3人は相談して,質問項目を相談しました。
介護歴,介護の資格,仕事を始めた理由,仕事を続ける理由,仕事のやりがいについても聴くことにしました。
そして,どんな回答があるのか予想して,それに対してどんな質問をするのか,考えました。
話を膨らませるテクニック
「予想される答えに対して,できるだけ『なぜ?』,『どうして?』っていう質問で話を膨らませればいいんだよね?」
「他にもテクニックとして,オウム返しする方法もあるよ。」
「オウム返し?」
「例えば,『介護の仕事は自分にむいていると思った』という答えがあったときに,『むいていると思った』とオウム返しすると,さらに話を膨らませてくれることが多い。」
「なるほど。」
「簡単だけど,かなり効果的な方法だよ。」
「それ,インタビューガイドに書いておこう」
インタビューガイドの作成
「じゃあ,エクセルの内容をワードに移してと。」
「こんな感じでいいのかな?」
「はしの方に,IDと日付を書く欄を作っておいた方がいいよ。
あと,半構造化面接だから,順番が入れ替わることもあるから,必要な項目を質問できたか確認できるように,それぞれの質問にチェックボックスの□を入れておいた方がいいかな。」
「なるほどね。じゃあ,こんな感じかな。」
「うん,いいんじゃないかな。」
リサさんたちは,インタビューガイドを作ってみました。
作成されたインタビューガイドは,こんな感じです。
「あとは,研究の説明書と同意書を準備して,しっかり説明と同意を取ることを忘れないようにしよう(「介護研究の進め方(研究計画を立てる)」)。
特にインタビューをするときは,聴きながらメモをとることも大事だけど,できればボイスレコーダーで録音した方がいい。録音してもいいかどうか,しっかり同意を取ることが大事だよ。」
「わかりました。」
おわりに
3人でインタビューガイドを作成したリサさんたち。
さて,次回(「介護研究ーインタビューデータの分析ー」)ではインタビューを実際に行うときの注意点などを紹介します。
他の研究方法は,「自分たちの介護を研究したい!研究方法のまとめ」でまとめていますので,参考になさってください。
できれば多くの方に読んでいただきたいと思っております。
よろしければ,SNSなどでシェアしていただけますと,励みになります。
ピンバック: 自分たちの介護を研究したい!研究方法のまとめ – ひとにやさしくじぶんにやさしく
ピンバック: 介護福祉学研究 スライドを作る | ひとにやさしくじぶんにやさしく