介護研究の進め方(研究計画を立てる)

投稿者: | 2018年1月25日

現場と研究との距離
研究って何?
介護研究の進め方(リサーチクエスチョンを立てる)」の続き

ここでは,リサーチクエスチョンが決まったあとの流れを書いていく。

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先行研究を探す

まず,ネットや図書館で,すでに同じような実践や研究をやっていないか,本や論文を調べる。全く同じ実践や研究はないかもしれないけど,類似する実践・研究は自分たちの実践の役に立つし,参考になる部分がたくさんある。それから,研究方法を知る上でも,先行研究は参考になる。

最終的に学会で発表したり論文を書いたりするのであれば,自分たちが行う研究にも学術的な根拠が必要になってくる。そのためにも,他の人の研究を良く調べておくことは重要。

「図書館で本は探したことあるけど,論文なんてどこで手に入るのかわからない」

っていう人もいると思うので,論文検索サイトを紹介。

Google Scholar

ご存知Googleが提供する,論文検索サイトです。日本語の論文も海外の論文もいろいろと出てきます。検索の方法は,普通の検索サイトと同じで,キーワードを入力して検索するだけ。

検索結果の右側に「PDF」と表記があれば,そのままダウンロードして論文を読むこともできます。

トップページにある「巨人の肩の上に立つ」というのは,万有引力の法則などで有名なニュートンが,フックの法則で有名なフックに宛てた手紙に,
「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからです。」
と書いており,偉大な先人たちの業績や先行研究などを巨人に喩えて、現在の学術研究の新たな知見や視座、学問の進展といったものもそれらの積み重ねの上に構築され、新しい知の地平線が開かれることを端的に示した言葉とされる。
(参考:レファレンス協同データベース

 

CiNii Articles

日本の論文検索サイト。Google Scholarで出てこなかった論文もここでは出てきたりする。(その逆もあり)

サイト上に論文があればラッキーだが,論文は,サイト上にないことも多い。その場合は,抄録を読んだりして,興味のあるものを図書館に依頼して,取り寄せてもらったりする。もちろん有料。身近に大学生や大学の先生,あるいは病院の先生など普段研究をする人がいれば,論文の手に入れ方を聴いてみたりすることもできるかもしれない。

研究計画を立てる

実際には,先行研究を調べることと,リサーチ・クエスチョンを立てることは,並行して行う。一度リサーチ・クエスチョンは立ててみたものの,先行研究を調べていくうちに,より興味のあるリサーチ・クエスチョンが見えてきたり,より早く明らかにしていかなければいけないことがわかったりすることもあるからだ。実現可能性の面でも,先行研究を参考にすることで,「無理そうだ」と思っていた研究も実現できるアイディアが先行研究にあるかもしれない。

こうして,リサーチ・クエスチョンが明確になれば,あとはほぼ自動的に研究は進む。
大学生が研究について教員や優秀な院生に相談したとき,しつこく聞かれるのは,「結局,あなたは何が知りたいの?何を明らかにしたいの?」ということだ。何を明らかにしたいのか,問われて問われて明確になった時には,研究の方法については,もうできたも同然。リサーチ・クエスチョンを明確に伝えれば,先生たちは「じゃあ,A,B,Cの方法が考えられるね。」と選択肢を示してくれるし,自分でも何となくわかる。
研究は,リサーチ・クエスチョンが明確になった段階で,もう8割進んでいるといっていいと思う。

研究の方法を考える

研究は以前にも書いたように,記録に基づいて事実を明らかにすることだ。
つまり,研究の方法というのは,記録の取り方だ。
介護現場で考え得る研究方法は,大体以下だろう。

  • アンケート調査(質問紙調査ともいう)
  • インタビュー
  • 観察
  • 実践
  • 実験

そして,これを利用者本人にやるのか,利用者の家族にやるのか,職員にやるのかと,いくつかの対象が考えられる。

アンケートやインタビュー調査は,実際に職員や家族,本人がどう思っているのか,直接的に意見を聴く方法だ。
観察は,ある場面に絞って,注目している行動や発言などの記録を取っていく。
実践や実験は,より記録を取りやすいシチュエーションを作って,記録を取っていく,という方法だ。

もちろん,アンケートと実践を組み合わせて,実践する前と後でアンケートをとって比較する,などの方法もある。

それぞれの方法は,例えば「アンケート調査」だけでも,本が2,3冊は書けるくらいなので,ここでは割愛する。(簡単な解説なら,また書くかもしれんけど)

同意の取り方を考える

研究に参加するかどうかは,本人の自由意思だ。そのため,研究者は,その研究が何を目的にしているのか(リサーチ・クエスチョン),どのように行うのか(研究計画)を説明し,同意を得なければならない。これは,医療や介護の現場でも使われる言葉だが,インフォームドコンセント(正しい情報を得た上での同意)という。

同意の取り方は様々だ。
アンケートなどは,まず最初のページに,研究目的と方法について説明を書く。そして,「提出をもって,研究の参加に同意したとみなします。」など明記しておけば,提出をした段階で,同意が得られたとみなされる。
他の研究の場合は,書面と口頭で説明を行い,書面による同意書が必要であることが多い。認知症などで,本人からの同意を得られることが難しい場合は,家族などの同意を得た後,会話ができる人であれば,本人にも説明して,同意を得る必要がある。

また,同意を得たあとであっても,その同意はいつでも取り消せることを研究者は保証しなければならない。
研究の途中であっても,いつでも参加を辞退できること。研究終了後であっても,「あの記録は,使わないでほしい。」とか「あの記録は破棄してほしい」と参加者が申し出た場合,その意向に沿うことを約束する必要がある。(そのために,研究者の連絡先を説明書に明記しておく必要もある。)

研究を実施するにあたり,施設の許可も必要だ。施設長など,ふさわしい人に研究計画を説明し,実施しても良いか図る必要がある。
論文や学会などで発表する場合,研究倫理について,どのように注意を払ったのか明記することが,一般的になっている。そのため,病院や大学などでは,研究倫理委員会が設けられ,研究計画を提出し,委員会の承認が得られて,はじめて研究できる,という形になっている。

個人情報の保護など

研究計画について,特に配慮しなければならないのが,個人情報の保護だ。一般的に必要とされるのは,以下のような項目だ。

  • 名前,住所,電話番号などは,厳重に管理する
  • アンケートなどは,すべて統計的に処理し,参加者名についてはID化するなどして,他者が個人を特定できないように管理する(匿名化
  • 観察や実践,実験などで,必要となったビデオや写真のデータは特に厳重に管理する
  • 学会や論文等で発表する場合は,基本的には個人が特定される情報は発表に含めない。(特例として,本人の同意が得られ,必要性がある場合は,写真等が発表されることもある。)

個人が特定できる情報は,名前,住所,電話番号,写真などの画像もそうだが,たとえば希少な病歴,仕事や役職などからも個人が特定できてしまう可能性があるため,このような情報の管理についても注意をする必要がある。
また,研究者は,研究に必要な情報に限り収集し,余計な情報を集めないようにするべきである。また,研究で集めた記録(データ)は,研究以外の目的で使用されないことを保障しなければならない。

記録が集まった後は,それを分析する必要があるが,名前などをID番号等に置き換えられた資料を用いて分析を行う。これも個人情報保護の一環である。

分析の方法を考える

結果の分析の方法についても,研究を開始する前に考えておく必要がある。

分析方法は,研究の方法によって,決まってくる。可能であれば,自分で学習したり,周囲で研究した経験がある人(例えば,看護職やリハ職など)に相談しておこう。

研究の実施

研究計画が出来上がれば,あとはそれに従って研究を実施するだけだ。

研究期間中に,感染症が発生したりなど,トラブルが起こることもよくある。

臨機応変に対応しながら,研究期間にも余裕をもって計画しておこう。

おわりに

実は,まだ分析や発表のまとめ方なども残っているが,ここまで読んだ人は,研究を実施するよりもその前段階の準備の方がはるかに大変だということがわかっていただけたと思う。すでに書いているが,リサーチ・クエスチョンが明確になった段階で,研究は8割できている。

「あれもやりたいし,これもやりたい!」

という人もいると思う。それはとてもいいことだし,どんどんやっていけばいいんだけど,一つ一つ,「何を明確にしたいのか」意識しながら取り組んでもらいたい。

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