介護福祉学研究 スライドを作る

投稿者: | 2018年6月24日

これまで,介護の研究方法について,いろいろ紹介してきた。(「自分たちの介護を研究したい!研究方法のまとめ」)
前回,マナブさんに誘われて,事例研究を発表することになったリサさん(「介護福祉学研究 事例研究」)。
今回は,事例研究のスライド作りに挑戦です。

目次

プロットを作る

リサさんは,マナブさんに紹介された,事例研究のワークシートを作成しました。

「マナブさん,この間教えてもらった事例研究のワークシート,作ってみたよ。」
「おお,早いね。じゃあ見せてもらえる?」
「はい,是非見てください!」

早速,パソコンでリサさんが作ったワークシートをマナブさんが確認します。

「入浴拒否の事例だね。うん,よくまとまっていると思うよ。」
「ありがとう。で,これをどうやって発表するの?」
「うん,スライドを作って発表するんだけど。」
「ああ,パワーポイントね。」

リサさんの表情を見て,マナブさんが言いました。

「もしかして,リサさん,パワーポイントを作るの苦手?」
「うん,何度かやったことはあるんだけどね。どうやって書いたらいいかわからないんだ。」
「そうか。じゃあ,パワーポイントの作り方も説明するね。」
「うん,よろしく。」

リサさんは,マナブさんにスライドの作り方を教えてもらうことになりました。

「じゃあ,まずエクセルを開いて。」
「え,なんで?スライドを作るんだから,パワーポイントでしょ?」
「その前に,話の流れを決める必要があるんだ。どういうフリをして,どういうオチをつけるのか。そのストーリーが決まらないと,スライドは作れないでしょ。」
「でも,なんでエクセル?」
「ほら,この間インタビューをするとき(「介護研究ーインタビューガイドをつくるー」)に,シナリオ作ったじゃん。」
「うん。」
「それと一緒だよ。今度は,発表の内容のプロットを作るんだ。」

プロットとは,ストーリーの要約のことです。ドラマや小説の脚本では,大まかな流れをつくる必要があるので,必ずプロットは作成されます。インタビューや学会発表,論文の執筆でも,あらかじめ大まかな流れを組む = プロットを作成することで,話の構成を作りやすくなります。プロットは話の構成の要です。学会発表や論文を作成するときは,必ずプロットを作成してください。
ここでは,エクセルを使った簡単なプロット作成を紹介しますが,もっと本格的なプロットの作り方もWebで調べられると思います。

「じゃあ,プロットの作り方を説明するね。
まず最初に,一番左に,スライドのページ番号を書いていく。」
「うん。」

リサさんは,とりあえずページ番号を書いていきます。

「それから,この間のワークシートを参考にしながら,大まかな話の流れを2列目に書く。その後,3列目に,その内容を書いていく。」
「こういう感じ?」
「ああ,ちょっと違うな。大まかな話の流れと内容は,別の行に書いた方がいいから・・・」

リサさんは,マナブさんにいろいろ指導してもらいながら,何とかプロットを組み立てました。
そのプロットが,こちらです。

「2列目に書いてあるのが,それぞれのスライドタイトルだね。」
「うんうん。」
「そして,3列目に,そのスライドに書く内容を書いてある。さらに4列目には,その内容について,もっと言いたいこと。」
「なるほど。」
「これが,そのまま,スライドになるんだ。」
「なんとなくわかったかも。」

今回のプロットは,エクセルをもとに作成しています。一番左にある「1」や「2」の数字を右クリックすれば,「挿入」と出てきますので,それをクリックすれば,行を追加することができます。さらに書きたいことがあれば,この「挿入」を利用することで,どんどん新しい行を加えていくことができます。さらに,複数の行を選択して「切り取り」を押して,別の行に「貼り付け」を推すことで,行の順番を簡単に入れ替えることもできます。「ああ,ここのところは入れ替えたいな。」というときは,この「切り取り」⇒「貼り付け」を行うことで,簡単に順番を入れ替えることができます。

 スライドを作る

「じゃあ,いよいよスライドを作ってみようか。」
「うん。久しぶりにパワーポイントを使うなあ。」

「じゃあ,さっき作ったプロットのタイトルを入れていけばいいんだよね。」

リサさんは,スライドを作成し始めました。

「あ,りささん。ちょっと。」
「え,なに?」
「そんなに,文字ばっかり書くと,発表を聴いている人が,わけわかんなくなっちゃうよ。」
「え,丁寧に書いたつもりなんだけど。」
「うん,丁寧なのは,いいんだけどね。」

リサさんのスライドには,このように書かれていました。

「はじめに
私たちが勤務するZ苑に,認知症のA様が入所された。A様は,普段穏やかで,職員や他利用者との関係も良好であるが,入浴については拒否が多く,1か月に2度ほどしか入浴できない月もあった。私たちは,A様の衛生状態も考え,A様が入浴しやすいアプローチを考え,それを実践した。その結果を発表する。」

「リサさんは,このページで,どういう発表をするの?」
「え?これをそのまま読むけど。」
「うーん,それじゃあ,聴いている人を混乱させるだけだと思うなあ。」
「え?なんで?」

スライドを作る意味

「あのね。スライドを見せられると,聴いている人は,自然とスライドを読むんだよ。」
「うん,私もそう。」
「でしょ?それで,発表者が話すと,聴いている人は,スライドを読みながら,話も聴かなきゃいけない。それって,すごく負荷がかかるんだ。」
「うーん,そうなんだ。」
「だから,リサさんの発表を聴いてもらうためには,できるだけ,スライドの文字情報は少ない方がいい。」
「え,そうなの?」
「うん,ちょっと修正してみるね。スライドは,あくまで補足資料だからね。」

マナブさんはそう言って,リサさんのスライドを修正しました。

「A様は,普段穏やかで,職員や他利用者との関係も良好
・しかし,入浴については拒否
(1か月に2度ほどしか入浴できない月もあり)
⇒A様が入浴しやすいアプローチを考え,それを実践
*その結果について報告」

「うわー,すごいシンプル。」
「でも,さっき書いたことと同じだよね?」
「うん。」
「これだけ文字の情報量が少ないと,聴いている人も余裕を持って聞けるんだ。だから,スライドに書く文字は,できるだけ最小限に。そして,できれば箇条書きにしてほしい。」
「なるほど~。」

文字の大きさ・書体

リサさんは,プロットを参考に,どんどんスライドを作っていきます。

「プロットを一度作っているから,作りやすいね。」
「うん,だいぶシンプルに書けるようになってきたね。
じゃあ,もう一つ注文。」
「え,まだ何かあるの?」
「そんな嫌な顔しないでよ。
まず,文字の大きさね。これ,ちょっと小さいんだよ。ほら,24ポイント。できれば32ポイント。小さくても28ポイントにしてほしいな。」
「ええ,でもこれでも見えるでしょ?」
「でもね,実際にスライドに映したら,見づらいんだよ。見づらいとね,聴いている人はスライドを見るのに一生懸命になって,リサさんがしゃべっている内容を理解しづらくなっちゃうんだ。」
「うーん,そういうもんかなあ。」

リサさんは,文字の大きさを直します。
すると,変なところで改行されてしまうところもあります。リサさんは,頭をひねって,その部分を上手くまとめました。

「あ,ごめんリサさん。あとね,文字のフォントなんだけど。」
「フォント?」
「うん。僕は,メイリオやゴシックの方が見やすくていいと思うんだ。これ,明朝体だよね?」
「うん。」
「ちょっと離れてみてごらん?これが明朝体で,これがメイリオ。これがゴシック。」
「ああ,たしかに。じゃあ,メイリオにしてみるよ。」

箇条書きで書く,文字の大きさは28ポイント以上,メイリオorゴシックで書く,はスライドを作成するときの基本です。しっかり押さえておきましょう。このパワーポイントには,スライド作成の基本を書いています。参考にしてください。

まとめ

マナブさんの指導の甲斐あって,リサさんは,ちゃんと発表用のスライドを作ることができました。
事例の発表例については,今後,介護自慢大会CaRPの活動で上がってくると思うので,参考資料として挙げていこうと思います。

研究方法については,「自分たちの介護を研究したい!研究方法のまとめ」でまとめていますので,参考になさってください。


できれるだけ多くの方に読んでいただきたいと思っております。
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