ああ,ブログをだいぶ放置してしまった。。。
前回,「介護研究 条件を比較する」という内容で,利用者の行動データを比較する方法を書いていたので,
今度は,職員を対象にアンケートをとって,その属性間を比較する方法について書いてみようと思う。
目次
ストレスの把握
前回と同じように,リサさんと施設長に登場してもらおう。
なお,前回同様,今回の話も実際の話ではなく,あくまで架空の話です。
リサさんが仕事を終えて記録を書いていると,アキラさんがやってきた。
「ねえ,リサさん,Aさんのこと聴いた?」
「え?どうしたの?」
Aさんは最近入ってきた男性の介護職員のことだ。
「Aさん,ここ数日無断欠勤していて,どうも辞めるらしいよ。」
「え?もう?まだ2週間も経っていないのに。」
「Aさん,ちょっと口下手というか,コミュニケーションが苦手みたいなところがあるじゃない。だからかなあ。」
「うーん,どうだろう。優しそうな人だと私は思ったけど。」
そこへ,施設長がやってきました。
リサさんが気がつくと,アキラさんはすぐに控室に隠れてしまいました。
「リサさん,ちょっとお願いがあるんだけど。」
「はい。」
「最近さ,急に辞める職員が何人かいて,ちょっと困っているんだ。ただでさえ人手不足なのに。。。リサさん達も大変でしょ。」
「ええ,まあ。」
「それでさ,足浴の時みたいに,職員の仕事の不満やストレスについて,調べてもらいたいんだ。」
「はあ。」
「また,頼むよ。私だって,できるだけ職場環境はよくしたいと思ってるんだ。ね。」
「わかりました。じゃあ,ちょっとやってみます。」
「うん,よろしく。」
施設長がいなくなってから,またアキラさんが現れました。
「また,安請け合いしちゃって。」
「うん,そうだね。でも私も気になってたから。特に,入ったばっかりの人で辞めちゃう人,多いでしょ。私もなんとかしたいと思ってたし。」
「そうかあ。で,どうするの?」
「前回は,利用者さんのナースコールを数えたけど,今回は。。。どうすればいいかなあ。」
「アンケートかなあ。」
「そうね,アンケートを作ってみよう。協力してよね。」
「うーん,仕方ないなあ。」
ダブル・バーレルの禁止
リサさんとアキラさんは,その日は時間があったので,その場でパソコンに向かい,アンケートを作り始めました。
「最初の質問はどうしようか。」
「あ,こんなのがネットにあるよ!職場のストレスアンケート。」
「『現在,仕事上でストレスを感じることはありますか?』か。そうね,じゃあこれを最初に聴こうか。」
「うん,そうだね。」
「で,次は,『現在の仕事で,精神的・身体的にきついと思うことはありますか。』」
「ちょっと,待って。」
アキラさんは,Wordに書いたリサさんの質問を見て,制しました。
「この質問,私は身体的にきついっていうのは特に思いつかないんだけど,精神的にきついって思うことはあるんだよ。その場合,どうしたらいいのかな。」
「そうか。たしかにそうだね。」
「私みたいな人が他にもいたら,仮に「はい」と答えたとして,それが「精神的にきつい」なのか,「身体的にきつい」なのかわからないんじゃないかな。」
「たしかにそうだね。じゃあ,『質問1.現在の仕事で,精神的にきついと思うことはありますか。』,『質問2.現在の仕事で,身体的にきついと思うことはありますか。』でどうだろう。」
「うん,だったら答えやすい。」
二重否定の禁止
「この質問も聞いてみたいな。『夜勤がきつくないと感じないですか?』」
「感じる!夜勤中の業務,多過ぎ!失禁とかが少ない日ならいいけど,多い日はもう。」
「ね。じゃあ,これも質問に入れよう!」
「じゃあ・・・『夜勤がきつくないと感じないですか?』『1.はい,2.いいえ』」
「まあ,これは1の人が多いと思うけど。」
「え?2じゃない?」
「なんで?私は夜勤がきついと思うよ。」
「うん,そうだけど。『夜勤がきつくない』と『感じない』だから・・・。あれ?」
「うーん,答えようと思ったときに,どっちに答えていいかわからないなあ。」
「普通に,『夜勤はきついと感じますか?』にした方がいいね。」
「そだね。」
キャリー・オーバー効果に注意する
「実際,介護士不足の問題は,みんなどんな風に考えているんだろうね。」
「じゃあ,それも質問に含めようか。ええと,『介護士不足の問題について,あなたの意見を教えてください。』」
・・・
質問紙を眺めていたアキラさんは,「うーん。」とうなってしまいました。
「これさ,『介護士不足の問題について,あなたの意見を教えてください。』のあとに,『介護の仕事を辞めたいと思ったことがありますか?』の質問があるじゃん?これ,私は辞めたいと思ったことあるけど,この質問のあとだと,『辞めたいと思ったことがある』って答えにくいなあ。」
「うーん,そうだね。」
「ごめん,私が介護士不足の問題を聞いてみたいとか言ったんだけどさ,考えてみたらこれは,職場のストレスと関係ないよね。この質問,ない方がいいと思う。」
「うーん,たしかにそうだね。じゃあ,この質問はなしにしよう。」
まとめ
この回では,アンケートの作り方について書きました。質問を作る場合,二重否定やダブル・バーレルやキャリーオーバー効果などに注意してみましょう。
「介護研究-アンケート調査の方法-②」では,回答の形式や匿名性の確保について解説します。
アンケートサンプルを参考にしながら,皆さんもアンケートを作成してみてください。
大事なのは,「回答する人が,回答しやすいアンケートを作ること」です。
そうじゃないと,回答者の本当の意見を聴くことができなくなってしまいます。
そのために,ダブル・バーレルや二重否定のところで注意したように,質問文の表現方法には注意しましょう。
また,回答者の負担になり過ぎないように,質問項目の数や自由記述の数なども注意しましょう(あまり質問が多過ぎると答える気をなくしますもんね。)
研究にはいろいろな方法があります。他の研究方法も知りたいという方は,「自分たちの介護を研究したい!研究方法のまとめ」をご覧ください。
できれば多くの方に読んでいただきたいと思っております。
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