しばらく,研究方法関連の記事を書くのを休んでしまっていた。
「介護研究の進め方(研究計画を立てる)」の続きです。
研究全体のまとめはこちら
正直,何を書こうか悩んでいた部分はあるんじゃけど,とりあえず研究計画の基本的な考え方を書いてみようと思う。
他にも書かんといけんことはいろいろあるけど,まあ自分のペースで進めていきます。
目次
リサさんの苦闘
例えば,施設内で,何かしらの活動をしたとする。じゃあ,足浴を取り入れてみる!ということにしようか。
それでは,介護福祉士のリサさんに登場してもらって,物語形式で進めてみることにする。
*ここからの話は,研究計画について説明するために作った完全に架空の話です。足浴にこのような効果があると検証されているかどうかは,筆者は知りません。
介護士リサさんの提案で,ある施設のあるユニットで,足浴を週に1回取り入れてみることにしました。
普通なら,活動に足浴を取り入れてみて,どうだったか職員で話し合えばいいはずです。
「気持ちよさそうだった。」とか,「夜,よく眠るようになった。」みたいな話し合いができると思います。
リサさんの施設でもそのような話し合いが行われ,週に1回だったら負担も少ないし,これからもやってみよう,ということになりました。
そこに意地悪施設長があらわれて,リサさんたちに質問しました。
「本当に足浴って効果があるの?ちゃんとわかるように説明してよ。」
リサさんたちは,なんとなく利用者さんが楽しそうにしていたので,足浴は良い,と思ったのですが,施設長は納得してくれません。
現場を見れば一目瞭然かもしれないけど,施設長はあまり現場に来ないし,その人にわかるように説明しようと思ってもなかなか難しい。
リサさんを含め,「少しは現場に顔を出せばいいじゃん。」と不満たらたらでした。
でも,それを言っても仕方がない。
リサさんたちは,まず足浴を行うことで,どのような効果が期待できるか話し合いました。
- リラックスできる
- 血行がよくなる
- 夜間はよく眠れる
介護士のアキラさんは,「リラックスしているかどうかは,どうしても表情や会話の様子からしか言えないけど,夜間よく眠れたかどうかは夜間の記録やコールの回数を報告できるから言いやすいんじゃないかな?」
そこでリサさんたちは「足浴をすれば,夜間はよく眠れる。」という効果をピックアップして,実際に夜間のナースコールの回数を調べてみることにしました。
1ユニット10名の利用者さんの夜間のナースコールの回数を調べてみると,足浴をした日は合計8回と普段より少ない回数でした。
リサさんは施設長に報告しました。
「足浴を行った日は,夜間のナースコールが8回でした。足浴は,夜によく眠れるという効果があります。」
「ふーん,じゃあ普段は何回くらいなの?」
「えっと,それはちょっとわからないんですが・・・。20回以上なることもあるし,5回くらいしか鳴らないこともあるし。」
「じゃあ,その日は,たまたま少ない日だったんじゃないの?」
「うーん,そうかもしれません。」
条件を比較する
リサさんは困ってしまい,またアキラさんたちと相談しました。
「じゃあ,足浴をやっていない日のコールの回数も調べてみて,それと比べてみないとね。施設長め,相変わらずめんどくさいことを言ってくるな。」
リサさんたちは,1週間の足浴していない日のコールの回数を調べてみました。
リサさんが足浴をしていな日のコールの回数を調べてみると,平均15回でした。
リサさんは,早速施設長に記録を見せながら報告しました。
「施設長,この1週間でみると,足浴をしていない日はナースコールの回数が平均15回,足浴をした日は8回でした。このことから,足浴は夜によく眠れるという効果があります!」
「ふーん。あれ?この日は足浴してないんだよね?」
「はい,足浴は水曜日にやっているので。木曜日はやってないですよ。」
「でもこの日は,コール7回じゃん?」
「はい,日によってコールが少ない日も多い日もあります。」
「じゃあ,足浴の効果って言えないんじゃない?」
データを集めて眺めてみる
憎き施設長!
リサさんは,またアキラさんたちと相談しました。
「うーん,たしかに施設長が言うことも,もっともかもしれない。じゃあ,もうちょっと記録をとってみて,足浴をやった日とやっていない日の平均値を比較してみようか?」
そこで,リサさんたちは,過去の分も含めて,2か月分(足浴:8日,足浴をやっていない日:48日)のデータを集めてみました。
リサさんがアキラさんと一緒に,いままでの記録を確認していた時,アキラさんがふと気が付いたように言いました。
「あれ?この日もだ。あれ?」
「どうしたの?」
「ちょっとおもしろいかも。全然足浴と関係ないけど。」
そういうとアキラさんはパソコンを使って,天気予報を調べ始めました。
「やっぱりだ。」
「何が?」
「これ,雨の日を見て。2月4日,5日,15日が雨でしょ。その日の回数が」
「9回,7回,10回・・・。あ,3月1日も雨で9回だ。」
「ね?天気と夜間の睡眠も関係あるんだろうね。」
統計的な分析をしてみる
天気のことはとりあえず置いておいて,データを集計して比較してみると.足浴を行った日はコールが平均7.5回,行っていない日は平均14.58回でした。
「でもさ,足浴やっていない日でも7回のこともあるじゃん?」
「そうだよね,特に雨の日。この記録じゃ施設長にまた『たまたまじゃん?』って言われるかも。」
「うーん,でも8回の記録の平均だから,大丈夫な気もするんだけど・・・」
するとPTのマナブさんが言いました。
「じゃあさ,統計的な分析をしてみるよ。」
「統計的な分析?」
「うん,t検定をかけてみる。」
後日談
マナブさんの分析の結果,足浴を行った日と行っていない日では,統計的な有意差があることがわかりました。
リサさんは,早速施設長に報告しました。
「施設長!2か月分の記録を取ってみました。すると,足浴を行った8日分の平均はナースコールが7.5回,行っていない48日分の平均は14.58回でした!マナブさんに統計的な分析をしてもらうと,有意差があることも確認できました。なので,」
「足浴は,夜間よく眠れる効果がある,だね。」
「はい!」
施設長は,にっこり笑って言いました。
「うん,わかった。じゃあ,施設全体で,特に夜間の睡眠時間が短い人に,足浴の活動を設けるようにしよう。」
「はい!」
リサさんは,とても嬉しく感じました。
「ところでさ,足浴をやるのに,効果的な時間ってあるの?午前中にやってもあまり意味はなさそうだけど。それについても,また『研究』してくれない?」
「『研究』ですか?」
「そう,リサさんがいままで僕に足浴の効果を伝えようとしてやってくれていたことは,まさに『研究』だよ。足浴が本当に効果があるのか,ちゃんと記録を取って,その記録を分析して,それに基づいて効果を教えてくれた。
今度は,どの時間が効果的なのか。それも記録に基づいて,調べてくれるかな。」
「は,はあ・・・・」
リサさんは,アキラさんたちとまた相談しました。
「そうだねえ。じゃあ,午前・午後・夕方でやってみたときを比較してみようか。」
「うーん,またマナブさんにも分析してもらわないとねえ。」
リサさんは,まためんどくさいなあと思いながら,でも「少しおもしろいかも」とも思えてきました。
まあとめ
まあ,僕が作った架空の話ですが。。。
最期の方では,リサさんとアキラさんは,「午前・午後・夕方でやってみたときを比較」という話も出ているので,
研究で大切な「条件を比較する」という考え方は身についたみたいです。
ダイエットのCMなどで,「〇〇kg減量!」みたいなのをよく見ませんか?
それってたしかにすごいけど,きっとカロリー制限したり,運動したり,いろいろしてるだろうから,
本当にその効果かどうかよくわからないよなあ,と思って,「条件比較しろよ!」と思ってしまいます。
条件を比較する別の例は,「寝たきりの利用者への名前の呼びかけについて検討する」で紹介しています。
できれるだけ多くの方に読んでいただきたいと思っております。
SNSなどでシェアしていただけると,とっても嬉しいです!
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