介護職は聖人君子のように思われることがあるけど

投稿者: | 2018年1月10日

利用者さんに,ほんまにむかついたことがあるんは,
わしだけじゃないと思う。


特養の仕事は,シフトによって,だいたいのルーティンがある。
例えば,わしが働いとった施設の早番は,
朝食介助 ⇒ 排泄介助 ⇒ 休憩 ⇒ 昼食介助 ⇒ 排泄介助 ⇒ おやつ介助という流れ。

7時出勤(実質6時半出勤)。
起床時間午前4時。
おは4を見て,家を出る。
出勤は早番の方が楽。
電車、座れるし。

早番に入るようになって3日目。
もう既に2日研修しとるけえ,その日は全部の作業を一人でやって,
それをユニットのリーダーに見てもらった。
食事介助,入浴介助は慣れとるけど,
排泄介助はまだ慣れてない時期。
時間がかかる。
それは仕方ない。

特に大変じゃったのは,男性で拘縮のひどいAさん。
左半身麻痺で寝たきりで,しゃべったりはせん。
時々,目を開いて,「うーっ」と,呻きともため息ともとれるような声を出す。
身体全体,顔面まで拘縮しとって,着替えさせるのがほんまに大変。
なおかつ身長もあって,体重もある。

Aさんは60代でまだ若い。
奥さんが毎日のように来て,Aさんの横に座って1時間くらい過ごす。
いつも,Aさんが好きだというラジオが,部屋に流れとった。

慣れない排泄介助をえっちらおっちら,
やっとの思いで終えて,利用者さんを離床して,
おやつの為に食堂へ誘導する。
ウチのユニットはほとんどが車椅子。
Aさんはベットから車椅子への移乗は二人介助。
わしが上半身を抱えて,下半身を他の職員さんに抱えてもらったとき。

「ねえ、なんか臭わない?」

大量の水様便が足まで・・・。
誰か下剤入れた?っていうくらいの量。
さっき,おむつ交換したばかりなのに・・・。
しかも,Aさん,一番大変なのに・・・。

「どっと疲れた」
っていう表現は,あの時のことを言うんじゃと思う。
排泄介助はまだまだ全然慣れてない。
でも,これは仕事。

「すいません,おむつ交換しとくんで,
他の人の誘導と食事介助,お願いしていいですか?」

Aさんと二人,部屋に取り残される。
部屋のラジオからは,出演者同士の冗談の応酬。
普段,わしはむかついたりせんのんじゃけど,
その時だけは,その声が,ほんまにむかついた。

おむつ交換を終えて,Aさんを食堂へ誘導。
汚れた衣類,おむつを片付けて,食事介助に入る。
リクライニングの車椅子に固まった身体を預けたAさんを見た。
こっちに顔を向けたまま,無表情で口をもごもご動かしている。

「クソが!」
心の中でそう毒づく。
瞬間,その自分をに驚き。
さらに疲れる。

なんの為の介護なん。
排泄が上手く出来んけえ,介護が必要なんじゃろうが。
全て予定通りに行くんなら,介護は必要なかろうが。
予定通りにいかんけえ,介護するんじゃろうが。

さっきの自分を否定しながら,他の人の食事介助をすすめる。
わしのことが見えとるんか見えとらんのんかわからん,
Aさんに向かって,その日は笑顔を向けることが
できんかった。

仕事が終わってロッカーで着替えとると,
「あれ?なんか疲れてます?
いままで見た事ないような顔してるけど。」
と同僚の職員に言われた。
職場の外ならなんとも思わんけど,
勤務時間が終わっとるとはいえ,
仕事場で疲れた顔をしとる自分が。
同僚に,疲れとるのがわかられてしまう自分が。
情けなかった。

ビールをいつもより多めに買って帰って,全部飲んだ。
Aさんに申し訳ないと思った。

せめて一人前の介護士になろうと思った。

*タイトル,「聖人君主」なくて,「聖人君子」だったw2018/2/12に修正。


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