お仕事ポイント(1)

投稿者: | 2019年12月3日

要介護高齢者が役割を意識できるプログラムの開発と効果の検証 ―デイサービスにおけるお仕事ポイントプログラムの取り組み―

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はじめに

これまで,高齢者の生活の質(QOL)を高める要因として,社会参加は注目を集めており,「生きがい」,「社会参加」といったキーワードで多くの研究・実践が行われてきた。例えば,認知症予防教室,体操教室,カラオケ,散歩などといった地域の高齢者が参加できるサークル活動,ボランティアやシルバー人材センターを通した地域貢献活動などが盛んに行われており,その効果として認知機能の改善やQOLの向上が確認されている。これらの「社会参加」は,カラオケや体操教室のように高齢者が自分の楽しみのために参加する活動と,ボランティアのように高齢者が他者や地域のために参加する活動とに大別される。この2つの活動を比較したとき,他者や地域のために参加する活動は,特に重要と考えられる。例えば佐藤ら(2011)は,高齢者の家庭内役割の有無とQOLとの関連を検討しており,家庭内の役割は「生活活動力」と「精神的活力」と関連していることを実証した。高齢者が自分にできる役割を果たし,「自分に役割がある」と感じることが重要であり,それが生きがいとなり,QOLを高める結果になると考えられる。

これは,例え高齢者が要介護状態になったとしても変わらないことであると考えられる。しかし,要介護高齢者を「サポートを受ける存在」としてとらえた実践・研究は数多く存在するが,要介護状態となった高齢者自身の社会的活動について注目する研究は少ない。筆者は介護職員という立場で高齢者福祉の現場に入り,積極的に自分から洗濯ものをたたむ,掃除をするという高齢者の姿を多くみてきた。「自分が早く帰って,○○の仕事をしなければいけない」と訴える高齢者も多く,積極的に何かしらの仕事をしようという意識が感じられる場面も多くある。このように要介護状態の高齢者であっても,自身の生活の活動として,様々な「仕事」ができる者は多く,またしたいと訴える者も多い。この能力を積極的に活用することは,本人のQOLやADLの維持向上に貢献できるのではないだろうか。実際に,同じような視点で複数の施設で実践が行われており,有名な事例としては,ベネッセスタイルケアが運営するまどか川口芝が,ホームの中での「役割」を通じ,生きがいとハリのある「その方らしい生活」を目指す取り組みを行い,リビング・オブ・ザ・イヤー2016で大賞を受賞した。他にも認知症の方がホールスタッフとなる「注文をまちがえる料理店」などもニュース等で紹介されており,要介護高齢者の役割とQOLとの関連については,注目されているといえよう。 そこで本研究では,高齢者福祉施設で利用者がそれぞれの役割を意識できるプログラムを開発し,その実践が利用者のQOLに与える影響について検討を行った。

2.プログラムの開発

プログラムは以下の5点に留意して,事前にプログラムの開発・実践を依頼していたデイサービス職員と協力して開発した。留意点は①利用者が正のフィードバックを感じやすいこと,②他者との交流を促進すること,③利用者の1/3以上は,できる・できるようになる・軽介助にてできるようになること,④ほぼ毎日利用時間に行えること,⑤皆に感謝され,やりがいを感じられること,とした。

このプログラムは,「お仕事ポイント企画」と名付けられ,利用者が行った仕事に応じて,ポイントを与え,50ポイント達成でプレゼントがもらえる方式をとった。図1のようなポイントカードを作成し,仕事内容に応じて職員がポイントカードにシールを貼ることにした。また,このカードの説明として,認知症の方にもカードの意味を理解できるよう「*このポイントカードは,あなたがいままで〇〇苑でしていただいたお仕事を記録するものです。」と記載した。

シールがどれくらい貯まったか目に見える形でわかりやすくすることで,利用者が正のフィードバックを感じやすいように,図2のようにポイントが貯まった数等がわかりやすいように作成した。実際にシールを貼ったポイントカードを図3に示す。

図3.実際にシールが貼られたカード

仕事の内容については,デイサービス職員に利用者の状況を考慮にいれつつ決定してもらった。その結果,作成されたポイントと仕事の内容は下の表のとおりである。

これらの仕事内容やプログラムが利用者に浸透しやすいように,図4のようなPOPを作成し,デイサービスで各利用者が座るテーブルの中心に置いた。POPの上部には,「『お仕事ポイント』始めます。」,中心部には仕事内容とポイント,下部には「50ポイントでプレゼント進呈!!」と示した。このPOPの内部に,そのテーブルの利用者のポイントカードとシールを入れておき,利用者が「お仕事」をしたら即時にポイントカードを取り出し,利用者の目の前でシールを貼れるよう即時フィードバックを行えるようにした。

本プログラムは,50ポイント貯まったら,施設から感謝状を進呈した。また,50ポイントごとに箱ティッシュ1箱を進呈し,あとで本プログラムによって進呈されたものとわかるように,本人の名前を書いてあるシールを貼った。ただし,50ポイント貯まったら何がもらえるのかは,プログラム実施中に検討されており,利用者はそれを知らない状態でプログラムに参加した。

図4.仕事内容を示したPOP

プログラムを実施する上で,①お仕事の働きかけはするが,決して強制はしない,②シールを貼るとき等,職員は感謝の声掛けをすることを約束事項として実施した。またプログラム期間中は,デイサービス相談員に経過の記録を依頼した。

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