特別養護老人ホームの「特別」って何?

投稿者: | 2018年1月28日
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いつも,「特養」っていうけど,特別養護老人ホームがなんで「特別」なんかは,知らん人が実は多い気がする。ここでは,特別養護老人ホームが,なぜ「特別」なのかについて,簡単に説明する。

簡単にまとめると

日本には,「養護老人ホーム」というのがあって,この養護老人ホームは,「病気がなく介護を必要としない自立した65歳以上の高齢者の方で,生活保護を受けている,または低所得などの原因によって自宅で生活ができないなどの経済的な理由を持つ方」が入所対象となる。

それに対して,「特別養護老人ホーム」は,「65歳以上で,身体上または精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし,かつ,居宅においてこれを受けることが困難な方」で,つまり特別な養護が必要な人が対象となる。

高齢者福祉施設の歴史

悲田院

日本の高齢者福祉施設の歴史は,実は結構古い。最初の施設は,聖徳太子による「四箇院(しこいん)の制」にまで,さかのぼる。四箇院とは,敬田院(きょうでんいん),施薬院(せやくいん),療病院(りょうびょういん),悲田院(ひでんいん)の4 つのことで,敬田院は寺院そのもの,施薬院は薬局,療病院は身寄りのない病人を収容救済した。悲田院は老若男女の生活困窮者を収容救済した。

四箇院が実際に聖徳太子によって建てられたかは定かではないが,光明皇后が興福寺に施薬院と悲田院を設置したとの記録があり,これが悲田院建立の最古の記録である。悲田院の「悲」は,仏教の概念で人々(生きとし生けるもの)に苦しみをともにする同感(同情・共感)の心を持つこと。

小野慈善院

悲田院からかなり時間が経過するが,1864年,金沢で小野太三郎が自宅を開放した民間施設「小野慈善院(現在の陽風園)」が,高齢者救済の最初の施設だ。

これは,高齢者だけではなく,病人,障がい者,身寄りの無い人など生活困窮者を収容する混合型の緊急避難施設としてつくられており,当時の福祉施設は,ほとんどかそのような形態だった。

小野三郎太は,この業績が認められ,福祉分野では日本初となる藍綬褒章を賜った。

東京府養育院

日本資本主義の生成期の明治初期における社会不安に対する緊急秩序維持,取締策としての1872年の東京府養育院(現 東京都健康長寿医療センター)だ。東京府養育院は,老人,子供,窮民,浮浪者などを対象とした混合収容施設が設立された。

東京府養育院の運営に,渋沢栄一は1874(明治7)年より関与し,1876(明治9)年5月11日に養育院事務長に任命された。その後,養育院は,1890(明治23)年,東京市営となり,渋沢栄一は養育院長に就任し,以来91歳で亡くなるまでの約50年間,院長を続けた。

現在,東京都健康長寿医療センターは,養育院が廃止され,高齢者を対象とする病院と研究所を擁する東京都の機関となっている。

養老院

高齢者専用の施設は,1895年(明治28)に聖公会のエリザベス・ソートンが始めた聖ヒルダ養老院(定員5人。東京市芝区にて2人で発足。女性のみを対象)が最初となる。この施設は,キリスト教日本聖公会の高齢信者を保護するための施設だった。

その後,神戸や大阪,東京など,各地に養老院が設立された。

浴風園の設立

民間の養老院がいくつか設立される中,国の姿勢としては,弱者救済は隣保相扶,つまり家族や親族,隣近所で行うものという考え方が強かった。当時の救貧法は恤救規則であり,その救済対象は「無告の窮民」つまり,身寄りのない貧困者のみだった。

しかし,1920年(大正9)の第一次世界大戦後恐慌,23年の二三年恐慌,それに同年の関東大震災により,状況は大きく変わった。特に関東大震災以降,自活不能な高齢者が増え,政府は対策に追われることになる。

そこで,政府は1925年(大正14年)に,恩賜財団浴風会を設立し,施設を浴風園と名づけ,27年(昭和2)に収容保護を開始した。浴風園の最大の特徴は,医師,看護婦を職員とし医療保障を始めたことだ。

質の浴風園,量の東京府養育院とよばれたという。

浴風会は,現在は病院や高齢者施設,研修所などを設けており,この研修所には長谷川式知能スケールを開発した長谷川和夫が所属していた。

老人ホームの誕生

1929年,恤救規則にかわり,救護法が制定される(1932年施行)。救護法の中で,養老院は,例外的な救護施設とされたものの,ようやく公的救済,措置の体系に組み込まれた。

1946年,旧生活保護法の制定で養老院は保護施設として全面的に社会福祉の措置の施設となり,公的援護体系に組み込まれた。

1950年現行生活保護法の制定で養老院は養老施設と名称を変え,老人の生活扶助施設として位置づけられた。

老人福祉法制定(老人ホームの誕生)

1963年,老人福祉法が制定され,養老院に代わり「老人ホーム」という言葉が使われるようになった。養老院は,養護老人ホームとなり,常時の介護を必要とする者を対象とする特別養護老人ホームと,無料又は低額な料金で契約により入所できる軽費老人ホームも制度化された。

介護保険法

介護保険法が1997年に制定され,2000年から介護保険制度が施行されることによって,特別養護老人ホームは介護保険サービスも行われるようになり,介護老人福祉施設としての一面をもつことになる。

養護老人ホーム

養護老人ホームは,老人福祉法に規定されており,身体上,精神上または環境上の理由および経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な,原則として65歳以上の老人を収容対象としており,経済的要件を設けている

行政による入所措置施設であり,主に経済的な理由で居宅において養護を受けることが困難な65歳以上の自立者を入所させ,養護することを目的とする。 措置に要する費用は公費負担であり,費用の徴収は利用者の負担能力に応じて行われている。特別養護老人ホームと違い介護保険施設では無い。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは,入所要件として経済的制限を設けず,身体上または精神上著しい欠陥があるために常時の介護を必要とし,かつ居宅においてこれを受けることが困難である者を対象としている。

複雑なのは,この施設は,老人福祉法,介護保険法の二つで規定されているところ。。。

まず,老人福祉法では,特別養護老人ホームという名前。この法律で,介護保険法による施設への入所が困難な高齢者を行政は措置入所させることができる。

介護保険法では,介護老人福祉施設という名前であり,要介護認定で(基本的には)「要介護3~要介護5」と認められた者が契約入所することができ,介護保険が適用される。

軽費老人ホーム

介護保険法が成立する前,養護老人ホーム,特別養護老人ホームは,措置入所の形態をとっていたが,軽費老人ホームは入所者と施設の契約によって行われる。

軽費老人ホームは,老人福祉法に規定されており,A型・B型・ケアハウスが設けられている。

A型,B型ともに家族・住宅環境上の理由により居宅において生活することが困難な者で介護を要しない者を対象としている。また,A型とB型の違いとして,A型は食事提供があり,B型は食事の提供がない,という違いがある。

A型は,有料老人ホームに入所できない低所得階層に属することが要件となっており,国庫補助による事務費以外の生活費の全額が利用者負担となっている。

B型は寮母つきのアパートで,A型の要件に加え,自炊ができる程度の健康状態にあることが入所要件であり,事務費の一部と生活費の全額が利用者負担。

89年度(平成1)からは介護利用型の軽費老人ホーム(ケアハウス)が設けられた。これは60歳以上で身体機能の低下などが認められ,独立して生活するには不安が認められる者であって,家族による援助を受けることが困難な状態にあることが入所要件となる。

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