BPSDに配慮した支援

投稿者: | 2018年1月20日

BPSDに配慮した支援について,
論文があったけえ,紹介してみる。

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論文の概要

鄭尚海,岡田進一,白澤政和(2011).認知症高齢者の行動・心理症状(BPSD)を改善するための支援の方法-特別養護老人ホームの介護職員による改善事例に対する質的分析をもとに-.介護福祉学,18(1),38-47.

この論文では,特養とデイにアンケートを送り,
BPSDが改善した事例をたずね,
その時の様子や,改善に結びついた支援方法について尋ねている。

そのうち,特養のものだけを抽出し,
質的な分析を行っている。

事例を分析した結果,
支援の内容として,
〈BPSD発生時の基本的対応〉と
〈BPSDに対する日常的配慮〉に
カテゴリーが大きくわけられた。

BPSD発生時の基本的対応

〈BPSD発生時の基本的対応〉は,
さらに,〔BPSD発生時の安全確保〕と〔BPSDに対する受容的対応〕
のサブカテゴリ―にわけられる。

安全確保については,歩き回る利用者に,見守りについたり,
口論などがあった場合は,職員が間に入るなどの対応。

受容的対応については,
訴えを十分に聞き,思いを受け止める
などの対応。

BPSDに対する日常的配慮

そして,おそらく重要なのは,こちら。
〈BPSDに対する日常的配慮〉は,さらに,
〔高齢者の肯定的心理を活用した支援〕
〔高齢者の残存機能を生かした役割形成・遂行への支援〕
〔高齢者との人間関係を形成・維持・改善するための支援〕
〔集団活動や個別対応による日常生活の活性化〕
〔物的・物理的環境を配慮した支援〕
の5つのサブカテゴリーにわけられる。

〔高齢者の肯定的心理を活用した支援〕

日頃から高齢者の趣味,関心などの
心理的側面に働きかけること。

例えば,集団が苦手な方には,
少人数のグループで,
別の場所で食事をするなどの配慮をする。
本人の趣味を考慮して,日常生活に取り入れたり,
本人が好きそうな本や雑誌を勧める
などが挙げられている。

〔高齢者の残存機能を生かした役割形成・遂行への支援〕

高齢者自身のことや職員の仕事の手伝いなど,
適切な役割を高齢者に果たしてもらう支援。

例えば,自室の掃除を促したり,
タオルをたたむことをお願いするなど。

〔高齢者との人間関係を形成・維持・改善するための支援〕

高齢者本人と他の高齢者,職員,家族との
関係に働きかける支援。
これは,集まった事例の中で,
最も多く取り入れられていた方法だった。

例えば,職員が積極的に声掛けをしたり,
相談をする。
レクなどで,他の高齢者とのコミュニケーションを図る
などが挙げられる。

〔集団活動や個別対応による日常生活の活性化〕

行事,レクリエーションなどの
大人数での活動や個別的な活動により,
高齢者の日常生活にメリハリをつけること。

例えば,機能訓練や行事への参加を勧めたり,
気分転換のために散歩を勧めたりする。

〔物的・物理的環境を配慮した支援〕

普段使っている物品や居住空間など
環境に対する工夫を行う支援。

例えば,車いすを変更して,行動範囲を広げる,
適切な歩行器に変更するなどが挙げられた。

くるみやの考察

この論文の結果は,論文の筆者も指摘しとるけど,
BPSDが発生した時の安全の確保みたいな
対症療法的な対応と,
普段からその利用者さんに配慮する方法にわけられると思う。

で,普段から接するときに必要になるんは,
その利用者さんが,「なぜ,そのような行動をとるのか」
職員が理解せんといけん,っていうことじゃと思う。
これは,BPSDに関わる本や論文で,毎回言われとるようなことなんじゃけど,
BPSDには,本人なりの理由があるって言われとる。
それが何なんか考慮した上で,
〔BPSDに対する受容的対応〕
〔高齢者の肯定的心理を活用した支援〕
が可能になると思う。

あと,もう一つ重要なんが,
普段からの人間関係。
論文の中でも,〔高齢者との人間関係を形成・維持・改善するための支援〕が挙げられとるけど,
実際,わしもBPSDが多い利用者さんと,
時間があるときにいろいろ話を聴いたり,
話題がなくても,わしの恋愛相談なんかをしたり
しとったもんな。
そうすると,何かあった時に,
わしじゃったら,落ち着いて話してくれたりしとった。

施設って,客観的に見たら,
利用者さんを職員がケアする場じゃけど,
例えば認知症が進行しとる利用者さんにとっては,
そうじゃないこともあるんよな。
特に,特養は生活の場。
であれば,職員も「介護してくれる人」じゃなくて,
「生活の中におる人」

何が言いたいかって言ったら,
職員は利用者さんにどんどん頼っていいと思う。
若者として,
恋愛のことを相談したり,
子育てのことを相談したり,
生活の事を相談したり,
将来のことを相談したり。

これが,〔高齢者の残存機能を生かした役割形成・遂行への支援〕
にもつながると思うし,
相談された利用者は,
「自分のことを信頼して,頼ってくれた!」
って思えると思うんよな。
それが,さっきの
〔高齢者との人間関係を形成・維持・改善するための支援〕
につながると思う。


できれば多くの方に読んでいただきたいと思っております。

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